なぜ農地や市街化調整区域の売買はトラブルになりやすいのか

買主の誤解|“買える=すぐ建てられる”という思い込み

農地や市街化調整区域では、売買契約が成立しても、すぐに家が建てられる土地とは限りません。
しかし買主の多くは、

  • 「お金を払えば自由に使える」

  • 「住宅地と同じだろう」

  • 「転用って申請だけでしょ?」

と認識しているケースが非常に多く、手続きや期間への理解が浅いことがトラブルの原因になります。
農地転用許可や開発許可が必要となり、申請の順序や協議の結果によっては “建てられない・引き渡せない” 可能性だってあります。

 

つまり買主の誤解は、「想定と現実のズレ」から契約後の揉め事を生む最も大きな火種です。
売買前に正しい情報を提示しなければ、クレーム・感情的対立・契約解除に発展するリスクを抱えることになります。

売主の過信|“自分の土地だから建てられるはず”という勘違い

売主側の多くは、

  • 「昔から持っている土地だからわかっている」

  • 「近くにも家が建っているから大丈夫」

  • 「農地でもみんな転用してるし、なんとかなるでしょ」

と考えがちです。
しかし現実には 土地の状況や行政の運用は、“過去の経験や感覚”では判断できません。

 

特に調整区域や農振エリアでは、
売主の理解不足が“過大な期待”となって業者を追い込むケースが頻発します。

売主の過信は、

  • 契約内容への理解不足

  • 引渡し時期に関する誤認

  • 転用できなかったときの責任問題

 

といった形で噴き出し、後から大きなトラブルになります。
売主の誤解を売買前に正すことが、実は最も重要なトラブル回避策です。

業者の説明負担|“専門外の手続きまで説明を要求される現実”

宅建業者に求められる役割は大きくなっている一方で、
農地転用や調整区域の手続きは宅建業の専門領域ではありません。

しかし現場では、

  • 買主:「これって建てられますよね?え、できないの?説明して」

  • 売主:「大丈夫なんですよね?どうすればいいの?」

という質問が 当然のように業者へ集中します。

結果、

  • 言い切れないことを求められる

  • 専門外の説明まで背負わされる

  • 調べる前提がないのに責任だけ負わせられる

という “板挟み状態” が起きやすいのです。

 

本来なら行政・法律・開発の判断を前提にすべきところを
業者が1人で抱えることが、最もリスクの高い構造になっています。

行政手続きの不透明さ|“結論が役所対応で変わる”という不可避のリスク

農地転用や開発が絡む土地は、同じ内容でも「自治体・担当者・時期」によって判断が変わることが珍しくありません。

つまり、

  • グレーゾーンが多い

  • 協議しながら前に進める性質がある

  • 明文化されていない“運用”が存在する

という前提があるため、買主も売主も
「契約前に正解を断言できるもの」と誤解しやすいのです。

しかし現場の事実としては、

  • “許可が前提”ではなく“協議が前提”

  • 結論がすぐ出ないことも普通

  • 手続きに数ヶ月単位の時間を要するのも一般的

 

だから 行政手続きの不透明さこそ、最初に共有すべき最大リスクなのです。